話したいけど声が出ないんです。~子どもの緘黙はなぜおこるの?~

家では良く喋るのに家以外の場所では、全くしゃべらない。

人見知りしているのかな?

もう、慣れてもいいころなのにしゃべらないなんて気になりますよね。

躾が悪かったのかな?

過保護にしてしまったのかな?

と悩んでいらっしゃる方もいらっしゃると思います。

場面緘黙症は、躾が原因ではないんです。

その多くは、「不安」から身体を守るメカニズムで起こっているのです。

子どもだけでなく、大人も緘黙が起こる場合があります。

 

🌻 場面緘黙って

緘黙とは、発声器官に問題なく、言語能力があるけれど

特定の場所でしゃべることができなくなってしまうことをいいます。

 

場面緘黙は、本人が自分の意思で話す場所を選んでいるのではないのです。

一定の状況におかれると、どうしても話すことができないのです。

不安障害の一つとされています。

 

 

 

🌻 場面緘黙の特徴とよくある誤解

場面緘黙は、子どもが学校や公共の場所で話せなくなることです。

家では問題なく流暢にことばを話せてるけれど、

保育園、幼稚園や学校の先生から「お子さん話さないんです」と聞かされて

そのことに気が付いてはじめて認識して、ビックリされるということも多いと思います。

 

場面緘黙がある子どもはわざと「話さない」わけではないのです。

周りにそのように誤解されやすいですが、

不安や緊張があるために「話せない」のです。

 

「時間が経過すれば自然と治る」と思われがちなんですが大人になっても緘黙が続いたり、

大人になってから発症することもあります。

 

「大人の場面緘黙」に関しては、社会的な認知度は子どもの場面緘黙よりさらに低くてあまり知られていないのです。

大人が発症する場合、既往歴を見ると子ども時代にまで遡れることがほとんどですが

子どものころの緘黙に関して、はっきりとした自覚症状がない大人もいます。

 

 

 

🌻 場面緘黙はなぜ起こるの?~原因~

場面緘黙は単一の原因で生じる状態ではないんです。

影響している要因は人によってさまざまで、

いくつかが複雑に絡み合って生じてきます。

はっきりしたメカニズムは分かってないのです。

場面緘黙が生じやすい要因を挙げていきますね。

〇 行動抑制的な気質(生物学的な要因)

一般的に繊細で感じやすく、何かになれるのに時間がかかったり、

人見知りが激しい気質を持った子どもがいるんです。

 

繊細な子どもは、集団行動や対人関係で、

「他人に対して慎重な態度をとる」「目立つことを嫌う」「新しい状況になじむのに時間がかかる」

という傾向があります。

 

繊細さは、その多くは先天的な脳のはたらきに起因していいるといわれています。

 

行動抑制的な気質が起こる原因は、

危険に反応する脳である「偏桃体」が大きく関係しているのではないかという仮説があります。

場面緘黙がある子どもは、脳の偏桃体の反応する閾値が低く、

刺激に対して敏感に反応してしまうのです。

この気質を持った子どもたちは危険を感じる程度が、

普通の人よりも敏感で繊細のために小さな刺激に大きな不安を感じてしまうのではないかと言われています。

そのため、家などのリラックスしてくつろぐことができる不安のない環境では言葉が話せるのに、

人が集まる学校などで繊細なことでも不安を感じやすく、

行動抑制してしまうことから「話せない」状態になっているのではないかとみられます。

 

〇 認知の偏り

緘黙の子どものなかには、言葉の発達や遅れや発達障害などが起因している場合があります。

・感覚過敏

・物事の受け止め方や考え方に偏りがある

・ことばの意味や理解に時間がかかる、単語を思い浮かべたり文章構成に時間がかかる

・発達障害

 

〇 話し言葉の理解

およそ3分の1の緘黙児に話し言葉や言語の問題があると言われています。

家庭より複雑な高度なコミュニケーションが求められるところでの会話が難しいと感じる子どもがいます。

バイリンガル環境におかれている子どもも場面緘黙が発症するのもこの要因に含まれます。

 

〇 身体・運動

身体の育ちや身体能力が緘黙の要因になる場合があります。

 

・運動の不得手

・非言語領域の問題(雰囲気を汲み取った行動ができない、不器用)

・身体発達の問題(身体発達がゆっくりしている、動きがぎこちない、バランスがとりづらいなど)

 

〇 環境要因

緘黙の発症に関わる環境要因は、単純なロケーションに限りないのです。

 

直接場所に関係する要因、クラスメイトとの関係や心身への危害など外からの負荷一般など

 

・急激な環境の変化(転校やクラス替え、引っ越しなど)

・恐怖や失敗、辛い経験(いじめ、病気やけが、傷つくことを言われたなど)

 

 

🌻 発達障害と場面緘黙

場面緘黙は、医学上は不安障害の一種と考えられており発達障害には含まれていないのですが

教育分野や行政政策上では発達障害支援法の対象になっています。

 

実際のところ、場面緘黙がある子どものうち、

発達障害が場面緘黙の発症に影響したと考えられています。

 

因果関係は、明確な診断分けが難しく「場面緘黙は発達障害と併存することがある」と

とらえたほうが、場面緘黙がある手立てを考える上で有効でいえるのでは。

 

 

・ 発達障害の二次障害としての場面緘黙

発達障害は見た目で分かる障害ではないのです。

早期発見・早期治療が大切とされていますが、見過ごされることもあります。

 

発達障害がある(疑いがある)子どもに対して、環境整備など適切な対応がされなかった場合、

その子にとって受けいいられない問題が生じ、場面緘黙になる場合があります。

 

子どもの特性が理解されないまま失敗経験を繰り返し、自己評価を下げることにつながります。

こんな場合、場面緘黙の症状に限って対処を行っても、改善がみられない事があります。

 

🌻 大人の場面緘黙の原因

場面緘黙の状態が青年期以降も続くケースがあります。

大人の場合も、子どもの場合と同様に「話さない」のではなく「話せない」状況のことをいいます。

 

大人の場面緘黙の原因は、小児期に発症しそれが継続ないし再発する場合がほとんどです。

小児期の場面緘黙について自覚症状がないことや見過ごされている場合があります。

 

成人後も場面緘黙の症状に苦しむ人や症状が経験された後も会話が苦手と認識している人もいます。

 

 

 

 

子どもの場面緘黙は2~5歳の入園や小学校入学時、または小学校低学年までに発症するといわれています。

不安から生じると考えられます。

しつけの問題ではないのです。

 

子どもがどんな要因を抱えているか探ることが大切なんです。

お子さんの様子をしっかり受け止め、学校などとも協力しながら、

場面緘黙を長期化させない工夫をしていくといいですね。

 

 

 

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